一晩で30人を手にかけた「大量殺人」
1938年、岡山と鳥取の県境にある山間の村で、深夜のわずか1時間あまりの間にたった一人の若者の手で、30人の老若男女が惨殺された。世にいう“津山三十人殺し(津山事件)”である。
しかし犯人は警察に逮捕されることなく、事件直後に近くの山中で自ら命を絶った。このため、事件の詳細は明かされないまま、警察の捜査は中止された。
その後も事件の詳細が不明のままだった最大の理由は、警察の捜査資料をまとめた「津山事件報告書」が、戦後しばらく閲覧できなくなっていたからだ。そのため1970年代から80年代にかけて、松本清張や筑波昭らの著作が事件を伝える主な資料として取り上げられ、事実関係が曖昧なまま事件の原因や経緯をめぐって様々な俗説が飛び交った。中には犯人の若者をダークヒーローとして崇拝する者まで現れた。
ただ最近の市民の調査によって、筑波昭の著作には創作の箇所が少なからず含まれていることが判明。バイブルだと思われた資料の信頼性が失われ、事件の解明はますます混迷を極めた。
私は2000年頃から最近まで断続的に現地取材を重ね、犯人の家族の係累を調査し、実際に襲撃されて命拾いした被害者のインタビューを行った。そして、アメリカ西部の大学図書館に所蔵されていた「津山事件報告書」を見つけ、それまでの定説とは異なる事件の真相にたどり着いた。
82年前の大量殺人の真相をここに伝えよう。
(以下略)
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Source: 不思議.net