母の通夜の晩、控室で親戚と思い出話をしていた。
叔父が話し始めたのは、母が駐車場で他人の車に乗ろうとしたときのことだった。俺を迎えに来て、二人で車へ戻ると、運転席に知らない男がいた。母は窓を叩いた。
「そこ、私の席です」
色が同じだっただけで、車種も違った。
何度も聞いた話なので、俺たちは途中から笑っていた。俺が「隣に自分の車があったのにさ」と付け足すと、叔父はまた笑った。
入口に座っている女だけは、黙って俺を見ていた。六十歳くらいで、黒い上着を着ていた。膝のハンドバッグに両手を置き、誰とも話していなかった。
皆の笑いが収まってから、女が言った。
「そこ、私の席です」
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Source: 哲学ニュースnwk

